1型糖尿病

子供でも発症する
「1型糖尿病」とは

子供でも発症する「1型糖尿病」とは 中高年でも発症が見られますが、主に小児~青年期での発症が多いとされているのが1型糖尿病です。
すい臓のインスリンを生じさせる細胞(β細胞)が自己免疫によって破壊されてしまったり、先天的にすい臓の機能に異常があることで、インスリンの分泌に問題が発生して引き起こされます。
糖尿病全体の約5%を占めており、1型糖尿病の患者数はおよそ10万人~14万人という調査結果があります。
有病率では0.09~0.11%となっており、これは10万人あたり90人~110人が1型糖尿病を患っている状態です。
小児慢性特定疾患治療事業の2005年~2012年度の登録データでは、1型糖尿病の発症率(人口10万人あたり)が女児2.52、男児1.91と発表されています。
また、1型糖尿病は、2型糖尿病のような運動療法や食事療法などでは治療が見込めない疾患であることも特徴です。
治療ではインスリンを使用する他、完治は難しいため継続的に治療を行わなければなりません。

1型糖尿病の症状チェック!
どんな時に自覚する?

のどが渇く、尿の量が増える

強いのどの渇きが慢性的に起こり、水分の摂取量が増えます。
これは血糖が上昇することで多尿の症状を引き起こし、体が脱水傾向になることが原因とされています。

全身の倦怠感

全身に倦怠感(だるさや疲れ)を慢性的に感じるようになります。
これはインスリンが上手くブドウ糖をエネルギーに変換できなくなってしまうことが原因です。

食べても体重が減る

糖尿病になるとインスリンによるエネルギー生成が上手く機能せず、体がエネルギー不足に陥ります。
不足分を筋肉や脂肪を分解して補うため、体重の減少に繋がります。

1型糖尿病は遺伝する?
原因について

1型糖尿病の主な原因は、自己免疫によってインスリンの分泌を行うβ細胞が破壊されてしまうことにあります。
自己免疫が正常に機能している場合は疾患の原因となるウイルスや菌などを攻撃したり、守ってくれたりするのですが、何らかの理由によって自己免疫の機能に異常をきたすことで、すい臓のβ細胞を破壊してしまいます。詳しい原因については未だ分かっていないため、根治は難しい疾患です。
また、1型糖尿病を両親の片方が発症している場合の発症率は1~2%、両親二人が発症している場合は3~5%の発症率とされています。
1型糖尿病自体が遺伝するのではなく、糖尿病が発症しやすい体質が遺伝すると考えられていています。

1型糖尿病と2型糖尿病の違い

1型糖尿病の治療では、治療開始と同時にインスリンを使用します。これは1型糖尿病の症状が、すい臓から分泌されるインスリンの不足によって引き起こされるからです。
一方で2型糖尿病の治療は生活習慣の改善(運動療法・食事療法)などを行いながら、インスリンを使用したり内服療法などを行います。2型糖尿病はインスリンの分泌低下の他にも運動不足や食生活の乱れ、またはそれに伴う肥満などが原因となっている場合が多いため、1型糖尿病と治療方法が異なります。
このように先天的な原因と後天的な原因によって治療の方法が変わるのが、1型糖尿病と2型糖尿病の大きな違いと言えます。

2型糖尿病について
詳しくはこちら

1型糖尿病の分類

症状の進行速度によって1型糖尿病は下記の3種類に分かれています。

劇症1型糖尿病

劇症Ⅰ型糖尿病は、膵島細胞が急速に破壊され、高血糖が急激に上昇し、時に致命的です。回復してもインスリン不足で血糖コントロールが難しく、社会生活に重大な支障をきたす疾患です。血糖不安定のため合併症リスクも高まります。ウイルス感染や免疫応答が、膵島β細胞の破壊に関与する可能性がありますが、詳細は未解明です。約70%の症例で上気道炎や消化器症状が現れ、急激な血糖上昇による口渇、多飲、多尿、倦怠感が見られます。重症化すると昏意識障害や昏睡に至ることもあります。進行速度が1週間という早さであることから、症状が見つかった際の血糖値は高く、HbA1cの直近1~2ヶ月の数値は低くなる傾向があります。

急性発症1型糖尿病

急性発症1型糖尿病は糖尿病の中でも一番多く見られる種類であり、発症してからインスリンの投与が必要になるまで数ヶ月程です。
自己抗体と呼ばれる、自身の体の組織や細胞に対する抗体が血液検査で発見されることが多いです。

緩徐進行(かんじょしんこう)
1型糖尿病

3種類の1型糖尿病の中で最も進行が遅く、発症から数ヶ月~数年後にインスリンの投与が必要となる1型糖尿病で、ゆっくり時間をかけてすい臓からのインスリンの分泌量が減少するのが特徴です。
2型糖尿病と類似していることから、緩徐進行1型糖尿病か2型糖尿病かの見極めが大切になります。
インスリンによる治療はすい臓のインスリン分泌量を観察しながら、時期を見計らって開始します。

1型糖尿病の検査

  • インスリンの数値
  • 膵島関連自己抗体の数値
  • ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)
  • 直近2ヶ月の血糖状態を調べる指標(HbA1c)
  • 食後(食事を行ってから2時間)の血糖値
  • 朝食を抜いた空腹の際の血糖値

尿検査・血液検査・問診(家族歴・病歴などをお聞きします)などで糖尿病の診断を行います。血液検査にて慢性的な高血糖状態であると判明すれば、糖尿病となります。また、異常値が出ている場合は、別日で検査日を設けることもあります。
正常な数値を測定するために、検査の10時間前からは食事を控えるようにしましょう。

糖尿病合併症の検査

  • DPNチェッカー
  • 動脈硬化検査・血管年齢検査(ABI・CAVI)
  • 眼底検査
  • 頸動脈エコー
  • 尿中アルブミン・尿蛋白の調査(尿検査)

高血糖の状態が慢性的になると動脈硬化などを誘発し、脳梗塞や心筋梗塞、失明リスクのある網膜症、足壊疽リスクのある神経障害、透析が不可欠となる腎症といった合併症を引き起こすリスクが高くなります。
糖尿病を早期発見し血糖値を正常にする治療を行うことで合併症は予防可能です。そのため、早期発見・早期治療が重要です。

1型糖尿病と2型糖尿病の判定

糖尿病の分類を判断する際に1型糖尿病か2型糖尿病かを特定しづらい場合は、以下の要因を参考にして判断を行います。

  • 2型糖尿病と判断し治療を行った後、血糖値の改善が見られない
  • 体重が急激に落ちたり、尿の量・回数が増える
  • セリアック病などの自己免疫疾患・甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症の方が血縁者にいる。

上記の要因が見られる場合は、1型糖尿病として判断される可能性が高くなります。

1型糖尿病は治せる?治療について

1型糖尿病は現在の医療では根治することはできない疾患です。2型糖尿病は運動や食生活などの生活習慣を改善することで治療が可能ですが、1型糖尿病はすい臓の機能障害や自己免疫などが原因となるため、インスリンを使用して血糖値をコントロールする必要があります。正しくインスリン療法を行えば合併症の発症を抑えることができる他、正常な方と変わりのない生活が可能です。
また、カーボカウント法を導入して運動量や食事に応じたインスリンの調整を行ったり、内服薬によって血糖値を抑制する治療も行います。

当院の痛くない血糖管理「FreeStyleリブレ」

当院の痛くない血糖管理「FreeStyleリブレ」FreeStyleリブレとは指に針を刺す必要の無いグルコース測定器です。
上腕にスマホで読み込めるセンサーを取り付けるだけで測定でき、検査時に痛みを感じません。
実際に測定されているのは皮膚の組織間液のブドウ糖濃度ですが、その数値を血糖値に換算しています。
測定器で換算した数値ですがデータは正確ですので、他の測定を行う必要はありません。
測定後は画面にグラフで直近数時間の血糖値が表示される他、測定時の血糖値が表示されますので、現時点での血糖値の数値が上昇あるいは下降しているのかを把握でき、食事を摂るべきか否かなどを判断できます。
また、インスリン注射を1日1回以上されていれば保険適応が可能です。

1型糖尿病で注意すべき
低血糖について

1型糖尿病で注意すべき低血糖について血糖値の正常な数値は70~109mg/dlですが、糖尿病の治療で使用するインスリンや血糖値を抑制するお薬によって低血糖を引き起こすことがあります。
特に1型糖尿病は血糖の変化が著しく、2型糖尿病に比べて低血糖に陥りやすいのが特徴です。
低血糖になるとその状態によって以下のような症状が見られます。

血糖値がおよそ70mg/dL以下

  • 顔色が悪くなる(蒼白になる)
  • 汗が出てくる
  • 心臓の鼓動を強く感じる
  • 理由もなくモヤモヤと不安を感じる
  • 指や手が震えだす

上記症状を交感神経症状と言います。

血糖値が50mg/dL程度

  • 目が見えにくくなる
  • 眠くない・疲れてないのにあくびがでる(生あくび)
  • 頭に痛みを感じる

上記症状を中枢神経症状と言います。

しかし、頻繁に低血糖を起こされる方や高齢者、自覚症状が乏しい方は、気付かないうちに以下のような無自覚性低血糖になっているケースもあります。

  • 普段から血糖値が50mg/dL以下で、急激に中枢神経症状が現れる
  • 血糖値を測定してはじめて、60mg/dL程度まで低下していると分かる

血糖値が50mg/dL以下

血糖値が50mg/dlを下回ると重症低血糖となり、命に関わる深刻な症状が見られるようになります。重症状態にならないためにも、低血糖の症状が軽度でも見られた場合は迅速な対応が必要です。以下は重症低血糖状態で見られる症状です。

  • けいれんが起きる
  • 普段はしない異様な行動を取ってしまう
  • 昏睡状態に陥る

1型糖尿病の方が低血糖を
起こしやすい時とは?

  • 誤った量のインスリン注射を行ってしまった時
  • 過度な運動をお腹が空いている時に行った場合
  • 食事を摂るのが遅れた/摂らなかった時
  • 食事の量が十分ではなかった時

1型糖尿病の方の低血糖への
対処法

  • グルカゴン点鼻薬は、1回分の使い切り製剤で、室温(1~30℃)で持ち運び可能です。家族が投与し、重症低血糖の救急処置に使用できます。患者が意識を失っていても、鼻の粘膜から吸収されます。
  • 低血糖の症状が軽度でも見られた場合は、20g程度の砂糖・150~200ml程度のブドウ糖が含まれている清涼飲料水・10g程度のブドウ糖のいずれかを迅速に摂取して、体を動かさないようにしましょう。
  • 車の運転中である場合は、安全な場所に即座に停車して上記の対応を行いましょう。

低血糖の症状は正しく対処することですぐに治まりますが、対処後15分以上症状が見られる際は、同じ対処をもう一度行うようにしましょう。

1型糖尿病の方が今からできる
低血糖への備え

  • 低血糖の症状が見られた場合の対応方法を、知人・家族にも共有しておくようにしましょう。
  • ブドウ糖やブドウ糖が含まれている清涼飲料水・砂糖などをすぐに手の届くところに常備したり、携帯できるようにしておくことが大切です。摂取量については担当医師に相談しましょう。

1型糖尿病の寿命と
70歳生存率について

スコットランドにあるダンディー大学が2015年、1型糖尿病患者24,691人を対象に健康な人との平均寿命の比較調査を行いました。その調査の結果、健康な人に比べて1型糖尿病患者は女性が12.9年、男性が11.1年ほど平均寿命が短いということが判明しています。しかしながら、米国が1975年に行った同様の調査では、健康な人と1型糖尿病患者の平均寿命を比較すると、1型糖尿病患者の方が27年程度短いという結果が出ていました。この結果から1945年~2015年の40年間で、1型糖尿病患者の平均寿命が大きく伸びており、医療の進歩が順調であると言えます。
また、1型糖尿病患者の死因として一番多いと報告されているのは心筋梗塞となっていますが、糖尿病性腎症も死因の影響が大きいと考えられていて、女性の場合は7.9年、男性の場合は8.3年程度寿命が短くなるという報告もあります。そして1型糖尿病患者の70歳時点での生存率は、女性が55%、男性が47%です。健康な人の70歳時点の生存率は女性が83%、男性が76%となっています。1型糖尿病患者の70歳時点の生存率が健康な人と比較して低くなっているのは、糖尿病の症状による合併症(心筋梗塞・糖尿病性腎症など)の影響が大きいです。
糖尿病は完治できない疾患であるとされていますが、早期発見と血糖値のコントロールを目的とした早期治療を行うことで、症状の進行を抑制したり合併症を予防できます。
糖尿病の症状について少しでも心当たりがある際は放置せず、まずは当院へご相談頂ければ幸いです。

TOP
ご予約・お問い合わせ 077-514-8351 LINE予約 WEB予約