血圧が高い

寿命を左右する
高血圧の定義と危険性

寿命を左右する高血圧の定義と危険性90mmHg以上の拡張期血圧もしくは140mmHg以上の収縮期血圧のいずれかの状態が慢性的に続いていることを高血圧と呼びます。そのため、運動を行った際の一時的な血圧の上昇は当てはまりません。日本国内に多くの患者数を抱えている国民病であり、その数は約4,300万人とされていて、同じく国民病と言われている糖尿病患者数の2,050万人を上回る患者数となっています。また、糖尿病患者は高血圧を併発している確率が高く、その割合は4~6割程度にまで上るとされています。
高血圧は自覚症状がほとんど現れないという特徴があり、知らず知らずのうちに症状が進行して脳卒中や心疾患などの命に関わる病気を発症させるきっかけを作ることから、サイレント・キラーと呼ばれます。
高血圧と糖尿病は互いに影響し合い、動脈硬化や糖尿病性腎症の進行を加速させる他、多くの合併症を発症させます。
糖尿病を患った場合は高血圧と診断されていなくても、血圧の管理を積極的に行うことが重要です。

糖尿病と高血圧の関係性は?
メカニズムについて

糖尿病を患った場合、高血圧を発症しやすいとされていますが、その理由については下記の通りとなります。

循環血液量の増加

高血糖になると血液の浸透圧が高い状態となり、腎臓や細胞内から水分が出てくることで全身の血液・体液が増えて血圧の上昇に繋がります。また、糖尿病の影響で腎機能が低下することでも、水分とナトリウムの排出が不十分になってしまい、高血糖と同じように血圧が上昇します。糖尿病腎症が進行すると透析による治療が必要となるため注意が必要です。

インスリン抵抗性

すい臓で分泌されたインスリンが上手く機能しなくなってしまった状態のことをインスリン抵抗性と言います。このインスリンが余分な分泌を続けている状態のことを高インスリン血症と呼び、この状態になると体内にナトリウムが蓄積されます。そしてナトリウムが体の中に溜まることで血圧が上昇していき、高血圧を引き起こします。

肥満

肥満状態である場合、血圧に大きく影響を及ぼすアルドステロンやインスリンなどのホルモンの働きが活発で、その影響から水分やナトリウムを体に蓄積しやすくなり、血圧が高くなります。また、合併症である腎症を発症しているとレニンと呼ばれる血圧上昇作用のあるホルモンが分泌される他、血液をろ過する働きが不十分になって血液量が増加し、血圧を上昇させます。

糖尿病で高血圧が続くと
危険な理由

動脈硬化を加速させる

動脈硬化を加速させる動脈が柔軟性を失ってしまい、心筋梗塞・脳梗塞・狭心症などを引き起こすきっかけとなる疾患が動脈硬化です。血糖値が高い状態が続いてしまうと血管を傷つけ、その影響で血管は柔軟性を失って動脈硬化を加速させるリスクがあります。健康な方と糖尿病・高血圧の方の脳血管疾患発症などのリスクを比較すると、6~7倍ほどの違いが見られます。

糖尿病性腎症を加速させる

糖尿病性腎症を進行させたり、発症を促してしまうのも高血圧の特徴です。腎臓は老廃物などを含んだ血液をろ過して尿を生成する働きがありますが、その機能のために多くの血液が流れ込んでいます。そのため、血圧が高くなると腎臓への負担が大きくなるうえ、腎症が発症するとさらに血圧が上昇し、症状を進行させてしまう悪循環を生みます。

糖尿病で血圧低下することも
ある?

糖尿病患者の方は高血圧の他にも低血圧に注意が必要です。

自律神経障害

自律神経障害自律神経障害が糖尿病によって発症していると、血圧を調整する体の機能が上手く作用せず、本来なら血圧を上げるべき日中に、低血圧状態を維持したままの状態になることがあります。特に血圧を下げるお薬(降圧薬)などを内服している場合、立ちくらみ(起立性低血圧)を引き起こすことがありますので注意してください。

高浸透圧高血糖症候群

糖尿病によって血圧が下がる要因の中に、高浸透圧高血糖症候群と呼ばれるものがあります。感染症やお薬の影響によって、糖尿病患者の体内でインスリンの効果が不足してしまう状態を指します。重度の脱水へと繋がる他、多飲、意識障害、体重減少などの症状が現れ、血圧の低下も引き起こすことがあります。

糖尿病の方にとって
理想的な血圧とは?

糖尿病患者の血圧は、日本高血圧学会が公表している「高血圧治療ガイドライン2019」によると、130/80mmHg未満に抑えることが目標とされています。ただし、高齢者の場合は、血圧コントロールが厳しすぎるとふらつきや起立性低血圧などの問題を引き起こす可能性が高いため、通常よりも高めの数値が設定されています。
高齢の患者様の方に関しては状態に合わせて注意深く血圧を管理していく必要があります。詳細な内容は、「高血圧治療ガイドライン2019 」に詳しく記載されておりますので、ご興味のある方はご覧ください。

糖尿病の方が高血圧を
予防するためにできること

運動と食生活の改善を行うことで高血圧と糖尿病を効果的に予防できます。それぞれの予防方法について解説していきます。

食生活の改善

食生活の改善栄養バランスを考えた食事メニューを朝・昼・夜の3食でしっかり摂っていきましょう。まとめ食い・食事を抜くなどは止めて、食事サイクルを乱さないようにすることが大切です。また、食事の際は早食いせずによく噛んでゆっくりと食べ、腹八分目程度に留めることを意識しましょう。この方法で食生活を改善すれば、すい臓にかかる負担が軽減され、機能回復が望めます。

運動

運動有酸素運動、もしくはレジスタンス運動を継続して行うことで、体内の脂肪酸やブドウ糖の利用を促せます。糖分がインスリンに頼らずとも筋肉・細胞に吸収されるため、高血糖の改善が見込めます。運動を続けることでインスリン抵抗性を改善し、ブドウ糖の量を体内でしっかりと管理できるようになります。

有酸素運動

サイクリングやエアロビクス、水泳やジョギングなどの小〜中程度の負荷が掛かる運動で、筋肉を使用する時のエネルギーとして酸素を使用します。有酸素運動は比較的長めの時間を使って運動するので、体脂肪を減らしたり心肺機能をアップさせる効果も期待できます。

レジスタンス運動

筋肉の量を増加させたり、筋持久力をアップさせる目的で行う運動がレジスタンス運動です。広く一般的に使用されている言葉で言えば、筋トレがイメージしやすいかと思われます。腕立て伏せ・スクワット・ダンベル体操などを行い、筋肉に負荷をかけ、トレーニングを行います。スポーツ選手から高齢者の方まで、幅広く行われている運動です。

運動の頻度について

頻度としては週3回~5回、あるいは毎日行うことが理想とされていますが、運動を普段行っていない方からするとハードルが高いため、最初は無理なく続けられる頻度でも問題ありません。また、急激に体を動かすと怪我に繋がる恐れもありますので、まずは軽い運動に体を慣らすことから始めると良いでしょう。慣れてきたら様々な運動やスポーツを試して、自分に合った楽しく続けられる運動を見つけることで、健康的な治療に繋がります。

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